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アノミー −自由の代償−

 投稿者:初心者  投稿日:2009年 8月 4日(火)10時44分31秒
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   アノミーとは、近代において顕著となった、ある種の精神状況をあらわす言葉で、無規範と訳されることが多い。

 現代人は、外部に、自己を律するための規範を持たない。近代以前の社会では、ご先祖様やお天道様、武士道や古くからのしきたりや因習などといった、自己を律するための確固とした規範があった。

 むかしの人たちは、こうした外部の規範に照らし合わせることで、みずからの心持ちや行為の適否や正邪を判断することができたのである。

 近代になってから、「迷信や抑圧からの解放」をうたい文句に、そうした規範はつぎつぎと消滅させられていった。その結果、現代を生きる人々は、外部に、自己の行為の正邪を判断する基準を持つことができなくなってしまったのである。

 現代人においては、みずからの思念や行動の適否の判断は、自分自身の規範意識のみにゆだねられている。しかし、内部に規範を持つことができるのは、外部に参照可能な規範があればこそである。外部に規範がなければ、内部に規範をつくり出すことはできない。

 かくして現代人の欲望は、いっさいの規範がないままにあおられ続けることとなる。あおられることによって生じた欲望がまっとうなものであるのかどうか、それを判断する基準を現代人は持っていない。自分の欲望はすべて正当なものと誰もが思い込んでいる。

あおる方とて規範意識は有していない。規範を持たぬものたちが、規範を持たぬものたちをあおる。こうした構図が、現代において出来上がっているのである。これがアノミーである。

 野放図にあおられた欲望は、とどまるところを知らない。外部に欲望を制御するための規範を持たない現代人は、欲望のおもむくままに、自我意識をとめどもなく肥大化させる。

 現代人の自我とは、ブレーキをはずしてアクセルを踏み込んだまま走り続けるクルマにたとえられる。いちど走りはじめると、止まることはおろかスピードを落とすことさえできない。燃料がきれるまで、どこまでも走り続ける。暴走化し肥大化した自我が現代人を苦しめる。

 現代社会はアノミー社会である。治療のための処方箋はどこにもない。欲望を道連れに、ただいずこへとも知れず走り続けるのみである。規範意識を持たない自我は、最終的に他者との連帯感をなくし疎外感を味わわされることになる。無規範、無連帯、疎外感。これが現代社会をおおうアノミーである。
 
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